Riberal Days
「障がい」という名の薄いフィルター
「障がい者雇用で大切なことは、のんき 根気 元気」
その言葉を聞いてから、知的障がい者と真剣に向き合おうと
改めて心に決めた健常者。
もちろん今まで真剣に向き合ってこなかったわけではありません。
ただ、向き合い方やすぐに結果を出そうとするなど
健常者側の都合で知的障がい者と接していたことに気づきました。
これまで【障がい】を考えすぎてはいけないと思っていたものの
どうしても、知的障がい者と接する際に【障がい】という薄いフィルター
を勝手にかけていたことを反省しています。
薄いフィルター...
薄いフィルターが、どこか「障がい者だから仕方がない」
という考えを生んでしまっていました。
前回の現場のリアルで、江戸川区就労支援センターの方がかけてくれた
「のんき 根気 元気」
今までは【障がい】を言い訳や理由にするような行動をとっても
それを許してしまっていました。
しかし、それが果たして彼らのためになるのか。
一人の社会人として自立(自律)するために
【障がい者だから】で容易く解決しないようにしようと考えました。
振り返るには、まだ短いかもしれませんが
知的障がい者と健常者、共に働きながらも
どこか【障がい】という言葉に束縛されていたのかもしれません。
それは知的障がい者も健常者も...
互いに【障がい】という言葉に束縛されていたことによる歪み。
知的障がい者は【障がい】を言い訳にしてはいけないですし
健常者は【障がい者】だからできないと決めつけてはいけません。
自閉傾向がある社員も、今までその障がいは
特性だから仕方がないと思って接していましたが、それも辞めました。
彼らを【一人の社会人】として接することから仕切り直しです。
すべてのことに配慮をしていても、埒があきません。
健常者が勝手に「障がい者だからできない」と決めつけてしまい
結果、限られたことしかせずにできることしかやらない
知的障がい者の中が多くいるという現実を知りました。
【障がい】という言葉にとらわれず、彼らと向き合うことで
リベラルでは、それを払拭しようと考えました。
「障がいがあるからできないと言うことはやめよう!」
「今まではそれでもよかったけど、これからはダメ!」
社会人として給与をもらう以上、【障がい】に甘えてはいけないと。
知的障がい者も健常者も一緒に努力していこうと
みんなで約束しました。
【鬼軍曹】佐久間の誕生 名付け親は同じ設立社員の上田部長
知的障がい者に仕事の手順を伝えていく中で
直面する、覚える速度がそれぞれ違うという大変さ。
だけど、私たちには魔法の言葉があると
都度思い返していました。
「のんき 根気 元気」
覚える速度が違えば、個別に向き合えばいいんだと
自然とそう思えるようになりました。
知的障がい者への厳しい指導を見た上田が
佐久間を【鬼軍曹】と名付けたのもこの頃。
5人同時に教えなければいけない大変さ。
時間がとにかくかかります。
理解力の違い、仕事を覚えるスピードの違い...
伝え方も、個々の障がい特性によって変わってきます。
障がい者雇用に経験の浅い佐久間は、葛藤します。
どう伝えたらいいか、個々に伝え方を変えてみます。
「ここを磨いて」を指示を出す場合は
「これを〇〇分で終わらせて」
→作業スピードが遅い社員には、時間で伝えました
「〇〇と同じくらいキレイに磨いて」
→汚れがわからない社員には、手本を見せることで
手本と同じくらいまで磨くよう伝えました
「ここは〇〇で、そこは〇〇で」
→どの道具を使って磨いたら良いかわからない社員には
ひとつずつ道具を見せながら伝えました
毎日、この繰り返しを続けていくうちに
次第に生産性を上げることができるようになりました。
職域も少しずつ広げることができ
複合機に加えて電話機(ビジネスホン)清掃も
手がけるようになりました。
電話機は、複合機に比べると、より細かい作業で道具の使い方も
多岐にわたります。
道具の使い方をただ伝えるたけでなく
なぜその道具を使うのかという理由も必ず伝えました。
間違うとどうなるかを、知的障がい者に知ってもらう必要があるので
わざと間違った磨き方をして、電話機に傷をつけて
知的障がい者に見てもらうこともしました。
この頃には、水洗いの仕事をひとりの知的障がい者が担当するようになります。
彼には、水があると気分が落ち着くという特性があります。
支援機関からも、水に関わる仕事が好きと聞き、水洗いの仕事を任せました。
すると、磨きの仕事よりも圧倒的に覚えも早く、スピードもあり
障がい特性を活かすとはこのことかと、納得しました。
知的障がい者と接していくうちに決めたこと。
それは
過度な配慮をしない
→「できない」「むり」「難しい」ではなく、なんでもやらせてみよう!
本気でぶつかる
→「障がい者だから許される」は会社では通用しないこと。
ダメなことはダメ、悪いことは悪い!
人として成長できるようにとことん向き合おう!
「のんき 根気 元気」を忘れずに!
すぐにできるはずはない!
そう頭の中で繰り返し、時に言葉に出しながら
知的障がい者と健常者の歩みは続きます。
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<第6回 現場のリアル>はこちら
みんなすごく大変だったと思います。何かあれば「障がい」があるからで許せれてきたことも、リベラルでは一切通用しないと伝えましたから、苦しかったと思います。
何度も泣きそうな顔になっても、苦手なことをやらせていました。上田部長は、そんな私の姿を見て「鬼軍曹」と言っていましたから。でもそうしたのには、彼らが泣き顔を見せても、ごまかせないことを理解させたかったからなんです。できるまで本当に何度もやらせていましたね。本当によく乗り越えてくれたと思います。
ただ、できたときはみんなで喜んだり讃えたり、「よく頑張った!」と声をかけあっていましたね。
その時に、知的障がい者の表情が一気に明るくなるんですよね。できないことができるようになることは、嬉しいこと。すごく嬉しそうな表情を見せてくれて、それは健常者にも同じことが言えますよね。
叱る時は必ず理由を伝えていました。ただ叱るだけではなく、できたときは、存分に褒めましたね。それは、すごく大切なことだと考えています。そのスタイルは今も変わっていませんね。
「のんき 根気 元気」は今でも私たちが大切にしている言葉です。上司だけでなく先輩からも、実際にこの言葉をかけてもらうことがあるのですが、この言葉の歴史を知っているだけに、言葉にすごく深みを感じます。
入社して今5年目ですが、リベラル社内にいると「障がい者」とか「健常者」とかそういったことが気にならないんです。みんなが【仲間】で家族のような存在、なかなかこんなに愛に溢れている会社はないと思います。設立社員が上田さんと佐久間さんだから、今のこの環境があります。2人ともすごいことをしてきているのに、それを一切すごいと思わずにいることが、私的にはカッコイイ!と思っています。私も障がい者ですが、「あれに挑戦したい」「これに挑戦したい」を実現させてくれる会社で、何でも言える環境でとても働きやすいです。
自由にやらせてもらえる分、責任も伴いますが、頼もしい上司が揃っているので、安心して仕事ができています。思いのままリベラルを伝えるのが私の仕事だと思っています。