Riberal Days

手 家庭
2021/04/15
第9回 現場のリアル
地域の特例子会社になろう!
ツイート いいね! 第9回 現場のリアル

特別支援学校と実習業務提携(デュアルシステム)

ある日、一本の電話がリベラルに入りました。
東京都立白鷺特別支援学校からでした。

「リベラルの仕事を授業として行ってもらえませんか。」

特別支援学校の取り組みとして、
働くを体験的に学ぶというデュアルシステムの一環として
リベラルの仕事を作業学習として取り入れたいという内容でした。
特別支援学校にいる間から、
"働く"を意識して企業の仕事を経験させていくというとても重要な授業。
リベラルでそれができるのだろうか...
すぐに上田部長が都立白鷺特別支援学校へ話を聞きに行きました。

話を聞くと、いくつか問題点が挙がりました。
まずは、週2回午前中講師としてリベラルから人を派遣しなければならない点です。
当時3名の健常者しかいない中、週2回健常者1名が抜けて
リベラルの社内は大丈夫か。会社はきちんと回せるのか。
講師には、当時障がい者の育成を担当していた佐久間が任されたため、
リベラルの知的障がい者を置いて授業に行って大丈夫だろうか。

上田部長と佐久間で話し合い、結論を出しました。
「来るもの拒まず、親会社の特例子会社だけでなく地域の特例子会社になろう!」

そして健常者の佐久間ひとりが行くのではなく、
知的障がい者社員の成長のためにも、誰かひとり知的障がい者を連れて行こう!
せっかくならば、白鷺特別支援学校の卒業生を連れて行こう!
そうすれば、在校生も卒業生が企業就労している姿を見ることで、将来を想像しやすいと考えました。

ほどなくして、火曜日と木曜日の午前中、
佐久間と知的障がい者社員の2名で白鷺特別支援学校へ通う日々が始まりました。

白鷺特別支援学校の作業実習にリベラルのコピー機再生作業を組み込むにあたり
ひとつお願いしたことがありました。
「この授業はリベラルのルールでやらせてください。」
佐久間のこの言葉に、白鷺特別支援学校の先生も快諾してくださいました。

『それでないとデュアルシステムの意味がないですからね!』

この言葉を聞いてとても安心しました。
しかし、作業実習をすることが決まってからずっと抱いていた心配なこと。
高校生に指導したことがありませんし、
リベラルにいる知的障がい者より障がいが重い生徒も多いことを知っていました。
企業就労を見据えた生徒が授業に参加すると学校側から言われていたものの、
いざ始まってみると、多様な障がいがある生徒たち。

しかし、非常勤講師として教壇に立つ以上、生徒たちからは「先生」と呼ばれます。
先生としてきちんとやらなければならないプレッシャーもありました。
リベラルは知的障がい者5名でスタートした会社で、
徐々に社員数を増やしていって10名になった所帯ですので、
一気に10名を教えることの大変さは想像を超えることでした。

 

 

 

試行錯誤で挑んだリベラル流の授業

非常勤講師になって生徒と接していくうちに、
みんなが話す「このクラス(授業)が好きだから」という言葉が
とても励みになり、もっとみんなのために頑張ろうと気持ちが奮い立ちました。

白鷺特別支援学校で授業を終えた後、帰りの車中では
もう一人の知的障がい者社員と毎回反省会を行い、
「もっとこうすれば良かった」
「この場合はこうしよう」
そう一緒に話し合いながら、次回の授業へと備え、
毎回の授業をこなしていました。

授業を始めてから一年が経過し、頭をよぎるのは
「実際のところどうなのだろう・・・」
そう不安が何度も頭をよぎりました。
しかし、
「また次年度もお願いします!」
と依頼してもらえたことで、一気に肩の荷がおりました。

「良かった、また頼んでもらえた・・・」

実際のところ、生徒たちに教えながらも
本当にこの方法でいいのかと悩み考え葛藤しながらの授業だったので
また翌年も依頼していただけたことに感謝と安堵で、

「自分がやってきたことが認められた」

ここでようやくそう感じることができました。
次も声をかけられたことは、これで良かったと思いたい!
よし、また引き続き頑張ろう!
次年度はもっと自分自身も成長ができるように。


白鷺特別支援学校での作業学習は、
前述の通り学校のルールではなく、リベラルのルールで行っていました。

実際にお客様に出す商品ですから丁寧に扱わなければなりません。
最初はコピー機だけでしたが、翌年以降は電話機の清掃も導入し、
コピー機再生班と電話機再生班にわかれて指導にあたりました。
生徒たちに教えることで、みんなが成長でき、将来を見据えることができれば
という思いで授業に向き合ってきました。

また、あらかじめ設定していた目標台数をこなすだけで満足してはいけないことも教えました。
「もっと台数をのばして驚かせよう!」
みんなのモチベーションをあげたり、チームで団結できるようにしたりとリベラルに近い環境を作り上げました。
生徒の著しい成長を目の当たりにすることも多く、その成長を見られることはとても嬉しかったです。

このデュアルシステムは2009年からスタートし、今もなお続いています。

現在は講師が、佐久間から管理課の藤崎に代わり(2020年夏)
知的障がい者2名と健常者1名で週1回授業を担当しています。

地域の特例子会社になろうと決めて受けた作業実習授業も、
リベラルとして10年以上携わることができ、その間に多くの先生方と出会うことができました。
先生方との出会いにより、社内で企業説明会や新人教諭を対象とした企業研修や実習などを
受けるまでになりました。

これが私たちが掲げた地域の特例子会社になろうという目標の一本の道筋であり、
今までも今もこれからも、この思いを胸に地域に根ざした特例子会社を目指すことが
リベラルの理念へと繋がります。

「来るもの拒まず」

当時、そう決めて受けた白鷺特別支援学校の作業実習授業。
あれから10年以上経った今も、基本的にこの思いに変わりはありません。
「リベラルは基本、来るもの拒まずですから」
そんなセリフをよく社内で聞きます。
原則的に依頼を受けた取材、実習や講演などは可能な限りすべて受けています。
私たちの企業理念「障がい者の仕事ぶりを世の中へ拡める」に通ずるように...
そして「地域の特例子会社になる」を実現するために...

リベラル 佐久間

今でもハッキリと覚えているんですよ。学校に来ていない生徒がいて、授業にも顔を出さないことがあったんですね。ある時、その生徒が急に授業に来たんです。「この授業が好きだから」って。
本当にね、その一言が嬉しかったんです。ああもっと頑張ろうと思いました。それが1回ではなくて、その後も何人もの生徒で経験しているのですが、これって教員の特権というか、教員だからこそ味わえる気持ちなのかなと思いましたし、それを味わわせてもらえたのは、非常に貴重な経験となりました。今でもあの生徒は元気かなとか、どうしているかなと考えています。
あとは、2009年当初はまだ知的障がい者との接し方も学び途中でしたから、先生方の生徒に対する指導を見て、かなり勉強させてもらいましたね。非常に元気でパワフルな女性の先生がいましてね、その先生は、障がい者だからといって特別視しないんです。だから言うことは言う。厳しいことももちろん言う。ここまで言っていいんだと、本人のためを思って発言するということを目の前で見せてもらいました。本当に勉強になりました。苦手とかできないとかそいういうのを一切言い訳なしに指導するというリベラルの今の姿勢は、その女性の先生がモデルになっています。こういった先生方との出会いもデュアルシステムのお話をいただいたからです。
生徒もみんな可愛くて。大変でしたけどとても良い思い出です。みんな元気にしているといいな。

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