Riberal Days
ザ・フンフィクション 〜コロナ禍の出会い〜
挿入歌)
…生〜きてぇ〜る♪生きて〜ぇいるぅ〜♪
テロップ)
「あなたはいま、誰と何処で暮らしたいですか」
ナレーション【以下、ナ】)
今年10月のとある週末。
急に肌寒い日が増え始めた東京で、ひたすらフンを回収している1人の男がいた…。
15匹と共同生活を送っている彼は、32歳独身男性のTである。
少し前からTの週末は、彼らの部屋の清掃が専らの日課となっていた。
スタッフ【以下、ス】)
あの…これって、いま何してるんですか?
T)
えっと、幼虫が入っていたマットをふるいにかけてフンとか大きい木くずを取り除いているところですね。
ス)
楽しそうに作業されてますけど、フンが好きなんですか?(笑)
T)
別にフンが好きってわけじゃないですけど…。
ほら、フンを取り除いた後のマットってすごいサラサラになって気持ちいいんです(ドヤ)
それに、この溜まったフンは定期的に実家に届けて家庭菜園の肥料にしてもらっています。
再利用もできるんですよ〜。
ナ)
コロナ禍で外出を自粛する中、彼が新たに夢中になり始めたのはカブトムシを育てることだった…。
現在、2匹の成虫、そして10匹以上の幼虫と共同生活を送っている。
ス)
カブトムシを飼い始めるきっかけは何だったんですか?
T)
夏休み頃を皮切りに数人の会社の先輩方に譲ってもらったのがきっかけですね。
この半年以上はコロナ禍で極力外出も控えていますし、自宅で何か夢中になれるものを求めていたタイミングでもあったと思います。
もう2ヶ月以上経ち秋に入りましたが、いまもまだ生きている成虫もいます。
幼虫なんかは日々ものすごい勢いで成長してくれるので、久しぶりに触れる生命力に感動させられっぱなしです。
ナ)
スタッフが取材に訪れたのは夏をとうにすぎた10/12(日)…。
それにも関わらず彼の家の成虫はたしかにまだ動いていた。
Tの注ぐ愛に応えるかのように。
T)
あと最近は幼虫向けにもっと美味しいマットを用意してあげたいなっていつも考えてますね。
この子たちに気に入って貰えるようなブレンドマットを作ってあげたいです。
いまはまだ試行錯誤しながらですね。
ス)
だいぶ入れ込んでますね…(引)
T)
そうそう、力を入れていると言えば。
最近はもう埒が明かないなと思って自宅にカブトムシ専用ラックも設置しました。
ス)
わざわざ設置したんですか?既にパンパンですけど、スペース足りてます?
T)
いえ、それが…。
設置したのも束の間、直ぐにスペース足りなくなりそうで(泣)
でも、そこを工夫しながら育てていくのも楽しみの1つなんですよ。
ス)
いまはこれがメインの趣味になってるんですか?
T)
そうですね…そうなっちゃってますね。
この子たちの成長を追いかけるのは、いま一番の楽しみになっています。
ナ)
そう語る彼の眼はキラキラと輝いていた。
ただ、そんなTにも悩みがないわけではないようだ…。
新しいカブトムシマットを購入しようとネットショッピングサイトをチェックし始めたTに声をかけ、最後に聞いてみた。
ス)
カブトムシの話ばかり聞いてしまったんですけど、週末なのにデートとかしないんですか?Tさん、彼女さんは?
T)
え?……は、はい??それ、今回の密着取材のテーマと全然関係ありませんよね?(怒)
すかさず挿入歌)
生〜きてぇ〜る♪生きて〜ぇいるぅ〜♪
ナ)
我々は察した…。
コロナ禍でより孤独を感じている独身のTにとって、もしかしたらカブトムシたちは心の拠り所となっているのかもしれない。
この社会で生きていく上で、人には誰にだってそういう存在が必要だ。
我々はTからそんな哀愁を感じつつ、彼の自宅を後にした…。
- 完 -